ギリシア人の物語2(塩野七生著)

 ペリクレスが男にいっさい応じなかったのは、言論の自由を尊重したからではない。
 言論の自由を乱用する愚か者に対する、強烈な軽蔑ゆえの振る舞いである。怒りもしなかったのは、この種の愚か者の水準にまで降りていくのを、拒否したからにすぎなかった。怒りとは相手も対等であると思うから、起こる感情なのだ。